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東京対東北の試合が行われるフィールドの周りには既に他選抜の選手が居た。
東海を倒した東北の実力を見に来たのだろう。
その中に見覚えのある背の高い人物の頭が見えた。
「スガさーん!」 が呼ぶと須釜は吃驚して振り向いたが、すぐに表情は笑顔になった。 よく見ると隣にはケースケの姿もある。 「なんだ、ケースケも見に来てたんだ」 「そういうも見に来るなんてな」 「だって気になんだもん、東北」 「僕も東北には興味ありますね〜」 「やっぱり? あ、平馬は?」 「さっきの試合終わってから見当たんねーんだよな。部屋戻ったかも」 「ふーん、そっか」 話している内に東京と東北のスタメンの選手達がフィールドへと入ってきた。 そこには真田達が3人揃って居てはびっくりして声を出した。 「うわ、一馬よかったね!スタメンじゃん!」 「俺が万年補欠だったみたいな言い方すんな!」 の発言に真田は真っ赤になって言い返し、その姿に他の東京の選手達は笑っている。 視線を感じてふとそっちの方を見てみれば日生の姿があった。 日生は少し微笑んだかと思えばすぐに真剣な表情に戻り、 その直後、試合開始のホイッスルが吹かれた。 「ねぇ、日生ってそんなにすごいの?」 「日生の足の速さは確かに凄いけど、問題はそこじゃない」 「…11番の彼ですね」 須釜の目線の先には色黒くて背の高い東北の11番、阿部が居る。 気付けば日生が勢いよく走り出し、阿部から大きくサイドチェンジされ、 ボールを目で追っているうちに阿部も走り出してあっという間に前線へ来た。 阿部の動きを見ていた椎名が、日生から出されたボールを取ろうとした阿部の前へと立ちふさがる。 しかし椎名が前に居るにも関わらず足でボールを椎名の頭上に上げ向きを変えてボールを追った。 ゴール前に居た木田がヘッドでクリアーしようとジャンプした時、目の前に阿部の足が現れ、そのままゴール目掛けてシュートを打った。 ゴールネットを大きく揺らしたそのシュートは、審判がファールを出した為無効になった。 試合開始直後にこんな展開になるなんて思ってもいないで見ていたは驚きを隠せなかった。 「まだ試合開始して3分経ってないと思うんだけど、なにこの展開」 「想像以上ですね、東北選抜」 「まだまだこんなもんじゃないぜ」 その後前線に真田が攻めていったものの、インターセプトされてすぐに椎名たちの居る ゴール前へと持っていかれてしまった。日生からのセンタリングで阿部にボールが渡り、 それを止めようとまたも椎名が立ちふさがったが、阿部が椎名に体重をかけ オーバーヘッドでシュートを打った。幸いにも渋沢がセーブし、ゴールは免れた。 しかしその後、またすぐに攻め上げてきた阿部が椎名を抜いて物凄い強さでシュートを打つ。 またも大きくゴールネットを揺らし、東北が先制した。 今の阿部の強烈なシュートには東京選抜のメンバーも驚き呆然としている。 「あれだけ自画自賛してた強気な椎名が簡単に抜かれていいの?」 「あんな奴が居たら気が気じゃなくなるのが当然だな」 「あのままだと椎名がキレて乱闘になるような気がするんだけど」 「さすがにそれはヤバイだろ…」 その後も東京選抜の攻撃はことごとくカットされ阿部のファールによるPKも外し、 完璧に東北ペースで試合は進んでいた。 FKが始まる前に東京が選手交代を行い杉原に代わって風祭を入れた。 試合が再開しFKで一度バーを直撃したボールはまた阿部のもとへ渡り、 フリーだった東北の選手にシュートされそうになった瞬間、風祭が飛び込みボールをカットする。 その後も風祭は阿部の攻撃を体格差など気にせずつぶしていた。 何度もしつこく付いてくる風祭に阿部がイライラしてきたところで前半終了のホイッスルが吹かれる。 短いハーフタイムを挟んで、すぐ後半が始まった。 「東京いつの間にか5バックになってるし」 「って、あの小っこいのDFか?」 「彼はFWですよ〜」 「マジ?」 「小さいの2人にしつこくマークされたら11番もイライラするよねぇ」 「あれも作戦の内か…?」 「でも椎名はチビに対して邪魔だとか言ってるケド」 「このまま東京が黙って負けるわけないと思いますよ〜」 「ヘタすりゃ延長までいくかもな、この試合」 ケースケの言ったとおり、試合はその後椎名が復活して1点入れたものの、 1-1の同点で後半が終了してしまい、延長戦に突入してしまった。 水野の代わりに小岩が入り、ついに延長戦がスタートする。 タッチラインぎりぎりのところで風祭が阿部からカットし、ボールは郭に渡った。 そして郭からペナルティーエリア前に出されたパスに小岩が全速力で走り出したが、 後ろからすぐ追いついてきた日生と一騎打ちになった。 小岩は負けじと更にスピードを上げて走ったが、日生は差を全く付けずについてくる。 と、その時小岩がつまずいて転び、日生が一歩前へと出た。 しかし小岩はすぐに起き上がってボールへと飛びつき、ぎりぎりのところでゴール前に居た真田にパスをすると、 真田はDF2人をトラップでかわし、フリーになったところでゴール左上を狙ってシュートした。 GKは反応して飛んだものの、ボールは大きくゴールネットを揺らす。 「ゴールッ!」 大きな歓声と共に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。 小岩のもとへ東京の選手達が駆け寄り、勝利の喜びを分かち合っている。 「一馬ってただの補欠じゃなかったの? シュート決めちゃったよ」 「何言ってんだ? あいつユースだぜ」 「マジで!?」 「マジ。この世代じゃ結構知られてる存在だと思うけど」 「うそー! 知らないし、そんなの!」 「俺も平馬もスガも知ってるし。向こうも俺達のこと知ってるって」 「ギャー!」 「…試合、終わったのか」 が叫び声をあげていると、突然後ろから平馬に声をかけられた。 今度は吃驚して再び「ギャー!」と叫んだに一同耳を塞いだ。 「平馬! 脅かさないでよ!」 「何さっきからギャーギャー騒いでんだよ」 「今までどこに居たんだ?」 「あっちの方の芝生で寝転がって東北戦の反省してたら寝ちまった」 「寝るなよ…」 「相変わらずマイペースですね〜」 平馬は腕をぐーっと伸ばして首をまわし、スコアボードに目をむけた。 東北が負けたことを知っても表情は変わらず、無言のままだった。 「東北負けたよ」 「そうみたいだな」 「勝っても負けても俺達には関係ないけどな」 「まぁな。…ていうか腹減った」 「私も!ごはん食べよ、ごはん」 「お前等なんかズレてるよなぁ…」 呆れてるケースケと、それを見て笑ってる須釜を気にせずと平馬は食堂に向かおうとする。 しかし今度は西園寺監督に呼び止められ、片付けを手伝わされることになった。 「腹ペコで死ぬんでパスです」 「ダメよーちゃんと仕事しなきゃ。ね?」 「平馬達手伝ってよ」 「俺関係ないし」 「ほらほら、私もやるから早く終わらせましょうね」 「ごはんー!平馬のバカ!」 |
2003.12.03 / Top | 11:Futsal → |