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「人使いホントに荒すぎだよ、監督は!」
ボトル・タオル・イス等の片付けを一通り任されたは空腹で倒れそうだった。 猛スピードで食堂に向かってる途中、施設の入り口で壁に寄りかかって立ってる平馬の姿があった。 立ったまま寝てるように見えたが、走ってきたに気付き顔をあげる。 「こんなとこで何やってんの?」 「待ってた」 「待っててくれるんだったら片付け手伝えよ!」 「それとこれとは別」 「えー」 「ケースケ待ってるから行くぞ」 「え? ケースケも待っててくれてるの?」 「食堂で俺達の夕食用意しといてもらってる」 「待たないで先に食べても良かったのに」 「…1人で飯食いたいのか?」 「それはやだ」 食堂は他選抜の選手達が既に夕食を済ませて練習に向かった為、中はがらがらで、 端のほうの席でケースケが3人分の夕食を置いて退屈そうに待っていた。 「遅かったなー」 「ケースケも待っててくれてたなんて」 「先に食って裏切り者扱いされたくなかったしな」 「俺も。っていうか、いただきます」 「平馬、フライング!」 「…いただきますって言ったじゃん」 「3人揃っていただきます言わなきゃ駄目」 「なんだそれ…」 「あー! 平馬食べるなよ勝手に!」 「2人が俺に合わせろ」 「うわー超自己中」 「それのことだし」 なんだかんだ言いつつも夕食を食べ始めて、食事中はが愚痴を言い 平馬は聞いてるようで聞いてなくて、ケースケだけが話を聞いていた。 「ちょっと平馬、聞いてんの?」 「ごちそうさま。…で、何?」 「何って…!」 「平馬いつも食べてる時は食べることだけに集中してるからな…」 「もう1回最初から話してよ」 「やだ」 「じゃぁケースケが代わりに話せよ」 「なんでの愚痴を俺が代わりに話さなきゃいけないんだよ」 「もーいい!」 は怒って黙々とごはんを食べ続ける。 それでも平馬は表情を変えず、少し黙ってまた口を開いた。 「俺がおもしろい話してやるから機嫌直せよ」 「…おもしろくなかったら殴るよ」 「ならやめとく」 「自信ないのかよ」 バカバカしくなってきて殴る気も失せたは笑ってしまった。 ケースケともやっと夕食を食べ終り、食器をカウンターに戻して食堂を出た。 「東海は練習とかないの?」 「明日試合があるわけでもないし、別に予定入ってないけど」 「負けたら見学だしな」 「これから外出て遊ぼうよ」 「やだ、寒い」 「じゃぁケースケ行こ。平馬おやすみ」 「え、あ、おう」 「…俺も行く」 「…行きたいなら最初からそう言いなよ」 結局、平馬も含めて3人で外に出ると、各選抜が別れて練習していた。 すると突然「ドドドド…」と地面が振動し始め、音のするほうに視線をやると、 九州選抜が練習場の方へと走って入ってきた。トラックに入ったところでラストスパートとなり、 全員スピードを上げて走っている。その中から1人先頭を突っ走るのはメガネをかけた高山だった。 一番でゴールした高山を他の選抜メンバーは呆れた様子で見ている。 「どこ走ってたんだ、九州は」 「俺短距離の方が得意」 「食後に走ったら横っ腹痛くなるのに」 「そうだな…って、あのデカイのこっち見てるぞ」 「すげーニコニコしてんな」 「ちゃーん! 見とったと? 俺1番乗りやけん!」 「アホ、黙らんや! そげんこと報告して何の意味ばあると!」 「カズさん…俺に負けよってジェラシ」 「んなわきゃねかろーが! いっぺんあの世ば見せるべきやな…」 「す、すんません!」 功刀の鉄拳が飛んでくる前に高山は謝り、城光の後ろへと隠れた。 城光が功刀を宥めると今度は達の方を向いて「悪いな」と謝る。 功刀もチラっとこちらを見たが、何も言わずに帽子を深めに被り視線を元に戻した。 「なんだ、あいつら…」 「九州って明日、都選抜と試合だよな」 「うん、確かそう」 「どうでもいいけど、何して遊ぶんだよ」 「鬼ごっこは嫌だからな」 「私も嫌だし!」 「俺はべつに鬼ごっこでも良いけど」 絶対捕まらない自信あるから、と平馬が言い出したのを無視して結局フットサルになった。 って言っても3人じゃ出来ない為、他のメンバーを探すことにした。 「じゃぁ俺ボール借りて、須釜とか声かけてくる」 「おう」 「よろしくー」 ケースケがボールとメンバーを探しに行き、平馬とも適当にメンバーを探しに行くことにした。 と、言っても明日試合のある選抜のメンバーは誘えない。 「ケースケさ、関東選抜全員連れてくんのかな」 「連れてきたら凄いから」 「だよな」 「ほら、こっちも探しに行くよ」 達は練習場から離れて、暇そうな人をうろうろと歩き回って探した。 けれど明日の試合に備えて練習してる選抜チームしか居なくてなかなか見つからない。 もしかしたら施設の中だったら居るかもしれないと思い、来た道をまた戻ることにした。 「東海の人とかって部屋に居るんじゃないの?」 「あー、そうかも」 「早くしないとケースケ戻って来るよ」 「…そういえばさ、この前の返事聞いてないんだけど」 「返事…? あ」 平馬の言う"返事"とは先日した告白の返事のことだった。 忘れていたといえば忘れかけてしまっていたんだけど、何かを言えばどんどん深みにはまる。 平馬の表情は普段通りの無表情で、感情が読み取れない。 「いや、あ、違う! 忘れてない!」 「待って、って言うから俺待ってたんだけど」 「…ごめん」 「別に、いい」 キッパリと言われた言葉には更に焦った。 歩き出す平馬の横顔の表情に変化は無かった。だから尚更焦ってしまう。 慌てて追いかけて平馬のジャージを引っ張り、足を止めた。 平馬が振り向いて目があった時、言おうとしていた言葉が喉の奥にひっこんでしまった。 「あ、…お、怒ってる?」 「別に」 「…そっか」 「まだ言えないなら、言えるまで待つし。俺はずっと好きでいるから」 そう言って少しだけ微笑んだように見えたのは一瞬の出来事で、 遠くの方から聞こえる足音に気付いた平馬は後ろを向いた。 視線の先にはケースケがボールと関東選抜のメンバーを連れてやって来ていた。 「あれ?おまえら誰も誘ってないのかよ」 「外に暇そうな奴居なかった」 「まぁ丁度10人揃ったから良いけど…って?」 「…え! なに?!」 「顔赤いけど、熱でもあんのか?」 ケースケが右手をの額に当てて、体温を確認する。 少しかがんでの顔を覗き込むように見た為、近い位置にあるケースケの顔を見て は尚更顔を赤くした。 それを見ていた平馬が無表情のままケースケのジャージを無理に引っ張った。 「ほら、早く行くぞ」 「だって顔赤い−」 「ケースケ君が顔近づけるから悪いんですよ〜」 「なんでだよ!」 何もわかっていないケースケを無視して、平馬はボーっとしているの手を掴み、既に歩き出しているケースケ達の後を追った。 |
2004.01.24 / Top | 12:Drink → |