|
関東選抜を混ぜてのフットサルをやった後、は部屋に戻りベッドの上でゴロゴロと転がっていた。
フットサルの最中は意識が半分上の空状態だ。
うつ伏せになって今日あった出来事をいろいろと思い出し、頭の中はぐちゃぐちゃになっている。
ベッドから起き上がり、時計に目を向けると時刻は8時を過ぎていた。
喉が渇いてジュースを買いに行く為にジャージのポケットに小銭を入れて部屋を出た。
部屋から出て少し歩いた所にある自動販売機でジュースを買おうとしたところ、 そこには東京選抜のジャージを着た真田が居た。 向こうもが来たことに気付き、ボタンを押そうとしていた手が止まっている。 「ラッキー」 「は?」 ガタン、と自動販売機から音がして、取り出し口にジュースが1つ出てきた。 停止してる真田の代わりにが勝手にボタンを押していたのだ。 出てきたジュースを取って早速フタを開けて一口飲むと、 やっと今起きたことを理解した真田はに激しくつっこんだ。 「何で勝手に押してんだよ!」 「オゴってくれるなんて良い奴だね」 「奢るなんて一言も言ってねぇし…!」 「冗談だよ。ケチ一馬」 はポケットからジュース代を出して真田に差し出した。 しかし"ケチ"と言われた真田はそれを受け取らず自分の財布からまたお金を出して販売機に入れる。 販売機からまたガタンと音がしてジュースが出てきた。 「マジで奢ってくれんの?」 「…これぐらい別に良い」 「私、一馬のこと好きになりそう」 「オマエなぁ…!」 「冗談で言ってるってわかってんなら怒んないでよ」 真田の反応が面白くては笑う。 しかし真田は自分がからかわれている事が嫌で不機嫌になってしまった。 それでもは「暇だから付き合え」と真田を引っ張って椅子のある場所まで移動した。 「ホントに自分勝手過ぎ」 「まだジュース代気にしてんの?」 「ちげーよ!どこまでケチ扱いすんだよ!」 こんな所英士達に見られたら…と真田は不安と焦りで混乱していた。 椅子に座っていても落ち着かずに貧乏ゆすりをしている真田を見てはまた笑う。 真田はのん気にジュースを飲むをじっと見ていた。 「照れるから見つめないでよ」 「全然照れて無いくせによく言うな」 「ばればれ?」 「…どうでも良いけど、俺部屋戻るぞ」 「やだ!」 「東海の奴等は?」 「今会いたい気分じゃない」 「なんだそれ」 先ほどよりテンションが下がりうつむくを見て、真田は部屋に戻るのを止めた。 本当はと喋りたいと思っていても、他の誰かに今の状況を見られた場合のことを考えると、 あまり落ち着いて喋ることが出来ない。真田は誰かが来ないことを祈り続けた。 「なぁ」 「ん?」 「俺ずっと不思議に思ってんだけど」 「何を」 「が何でココに来たのかってこと」 「どうでも良いこと聞くなよ」 「どうでも良くねぇっつーの!」 「話しても良いけど高いよ」 「部屋戻る」 「やっぱりケチじゃん!」 「話聞くだけで金取る方がセコイんだよ!」 「冗談に決まってるでしょ? そんなのもわかんないの?」 「この…!」 あぁ言えばこう言う真顔のに対して真田はまともな会話が出来ず疲れている。 次から次へと出てくる言葉に椎名の姿が思い浮かんだが、椎名に比べればマシだ。 そしてそこに郭が加われば事態は最悪な状態になると思い、これ以上考えるのはやめた。 一人で想像し、頭をぶんぶん横に振ってる真田を変な奴と思いながらもは喋り始めた。 「別に特別な理由なんてないよ」 「じゃぁ何で来たんだよ」 「父親が行けって。うちの父親、榊さんと中学時代の同級生で仲良しなんだ」 「親もサッカーやってんのか?」 「昔の話ね。今は普通に働いてるけど」 「へぇ」 「ただ、暇なら同年代のサッカーを生で見て来いって言われただけ」 「…もっと凄い奴だと思ってたのに意外と普通だな」 「凄いって?」 「留学してたとか、クラブ入ってたりだとか」 「まさか。父親以外、私がサッカーするの認めてないからそんなの無理」 やってみたいけどねー、とは苦笑しながら言う。 突然、誰かの足音が聞こえ、まさか!と思った真田は恐る恐る足音のする方を見た。 するとそこには帽子を被って一人で歩いてる功刀の姿があった。 真田はとりあえず郭と若菜じゃないことが分かると安心してホッと息を吐く。 「誰?」 「九州の奴。じゃぁ俺部屋戻るぜ」 「うん。ジュースありがとね」 「あぁ。じゃぁな」 真田と別れたのと同時に、功刀が現れの方に近づいてきた。 帽子ではっきりとは見えないが、相変わらず目つきが怖い。 自分と同じ位の高さの身長ではあるが迫力負けしてしまう程の存在だった。 「おい」 「ケンカならお断りですけど」 「なしてオマエとばケンカせなならんのや。アホか」 「用事があるなら早く言え」 「…ウチのバカ昭栄ば見あたらんのや」 「迷子?」 「んトコにおると思とったけん。ドコ行きよったんや、あのバカ」 明日の作戦会議でもするのか、居なくなった高山を探して施設内を探し回っても見つからず 功刀の怒りは頂点に達しようとしていた。 しかし今ココで怒りを爆発されても困るは、仕方なく一緒に高山を探すことになった。 施設の中に居ないとすれば、まだ探していない外も見てみようと2人はロビーから外へ出た。 外は明かりがぽつぽつとしか無く、ほとんど真っ暗な状態だった。 「寒」 「この時期になして半袖ば着とると? やっぱアホやな」 「さっきまで動いてたから暑かったの! カズの方がアホだし」 「誰がアホじゃ! ったく…ホラ、これ着とけや」 差し出されたのは、功刀が着てた九州選抜のジャージの上着だった。 功刀が上着を貸してくれるなんて思ってもいなかったは驚いたが、素直にそれを借りて腕を通す。 「サイズぴったり」 の一言に功刀の動きがピタっと止まる。 「…なんや、俺ばチビやって言っとおんか」 「まぁ周りに比べれば小さいかもね」 「前言撤回。上着脱げや!」 「いーやーだー! 男に二言は無いんでしょ!」 「そげん事言った覚えなか。脱がんかい!」 「ちゃんに何ばしよぉっとですかァー!」 突如、横から勢い良く飛び出してきた高山が功刀にタックル、体格差と怪力で功刀は大きく吹っ飛んだ。 それから高山は手に持っていたカラッポのヤカンを地面に置いて、の肩に手を置いて無事を確認する。 「こげな暗い場所でカズさんと2人きりなんて危ないっちゃよ!」 「オマエば勝手にどっか行きよるから探しとったんじゃボケェ! 自分の立場わかっとぉんか!」 「す、すんません! 脱げって言いよるけん、てっきりちゃんば襲ってるのかと…!」 「んなわけなかろーがっ! 良く見んかい、コレは俺の上着やろ!」 「…おぉ! 九州選抜の上着ですたい!」 「気付くの遅いんじゃ! そのメガネ粉々に砕いてやるけん、貸せ!」 暗闇で騒ぐ功刀と高山を無視して、はジャージの上着を借りたまま施設へと戻ってしまった。 結局、行方不明の2人を探しに城光が来るまで功刀の暴走が収まることはなかった。 |
2004.01.26 / Top | 13:Free Man → |