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偶然廊下で会った榊に部屋割りを聞いて、辿り着いたのは九州選抜3名が居る部屋。
ドアを3回ノックしてみたが反応は無い。もう1度3回叩いたが無反応だった。
しかしドアの向こう側からは功刀だと思われる人物の声が聞こえる。
ドアノブを掴んで押してみたら偶然にもカギが開いていて中へ入ることが出来た。
部屋に入った途端、目の前に飛んできたのは長方形の枕で、それが思いっきり顔面に直撃した。 「痛…!」 「…? そげん所で何ばしよっとね!」 「ジャージ返しに来たに決まってんでしょ…! 何で朝から枕投げしてんのよ!」 「枕投げじゃなか。バカがいつまでも起きんから枕取り上げただけや」 「勢い良く取り上げんかったら吹っ飛ぶことも無か」 すまんな、と九州選抜のキャプテン・城光がに言う。 しかし枕を取り上げられても起きない高山に功刀も城光も呆れていた。 はベッドに近づき、寝ている高山の顔を覗き込んだ。 「大声出しても起きない奴の起こし方って知ってる?」 「知らん」 はさっき飛んできた枕を高山の顔に押し付けた。 つまりこれは息を止めさせて苦しくなった所で起きる、という作戦らしい。 案の定、10秒程したところで高山が勢い良く起き上がった。 「ぶはー! か、カズさん! 今、金縛りにあったとです!」 「ほら、起きた」 「一歩間違えば死ぬやろ…」 「何が金縛りじゃ! しばくぞコラ!」 「あれ…? なしてちゃんが居るとですか?!」 「ジャージ返しに来ただけ。用件済んだから帰るわ」 また後で、と言ってはジャージを功刀に渡し、騒がしいこの部屋から出た。 ドアを閉めてもまだ部屋の中で功刀と高山は大声で何か叫んでいるのが聞こえる。 −なんだか朝っぱらから疲れたな ハァと息を吐いて首を回し、少し早いが朝食を取りに食堂へと向かった。 「今日はずいぶん早起きだね」 「私のことバカにしてない?」 「まさか。俺より絶対頭良いでしょ」 「そういう問題でもないけど」 「英士とちゃんだったら互角じゃねぇの?なぁ、一馬」 「どうでもいい…」 テーブルを囲んで話すのは東京選抜のエリートトリオと。 食堂の入り口で偶然会い、誘われるがままに同じテーブルで朝食を食べている。 真田は朝が弱いのかいつもより少し不機嫌な感じで返事をしていた。 はいつもと違う様子の真田が気になって隣に居た英士に理由を聞いた。 「一馬怖いよ…何かあったの?」 「同室の奴等が夜に騒いでて寝不足らしいよ」 「同室って誰?」 「風祭と藤代と鳴海。風祭はすぐ寝たみたいだけど」 「確かに藤代が居れば寝不足になりかねないね」 「あー俺も思った」 「結人は藤代と一緒に騒ぐでしょ」 会話している3人のことなど頭に入っていない真田は箸を持ったまま今にも眠りそうな感じだった。 隣りで若菜が少し大きな声で騒いでいても全く気にする様子がない。 がうとうとしてる真田の頬を軽くつねって声をかけた。 「どうせ試合出ないんだから部屋で寝てれば?」 「"どうせ"って何だよ!」 「じゃぁベンチで寝てなよ。交代になったら起こしてあげるから。呼ばれるか謎だけど」 「最後の言葉、嫌味だろ…!」 「仕方ないだろ、一馬。事実だし」 「一馬の分も俺が頑張るから安心して」 「友達の言う言葉じゃねえ…!」 一馬の眠気はサッパリと覚めたが、結人・英士・の冗談に機嫌はどんどん悪くなる。 しかしは眉間にシワの寄ってる一馬を見て笑っていた。 それを見た一馬はもう諦めて黙々と朝食を食べ始めた。 「なんか楽しいね、一馬と居ると」 「はっ…!?」 「俺と居るのは楽しくない?」 「英士と居るのは楽しいっていうか疲れずに済むって感じ」 「なんだかよく分からないけど、とりあえず喜んでおくよ」 「うん、喜んどいて」 「一馬も英士もずりー! なぁ、俺は?」 「うーん、普通かな」 「なんだよそれ」 4人の笑い声が騒がしい食堂の中で目立ち始めた時、の背後に人が立ち止まった。 それに最初に気付いたのはの前に座っていた英士で、それにつられても後ろを向いた。 するとそこには功刀の姿があって、英士と目があったからか、眉間にシワがよって嫌な空気がながれてる。 「あれ、なにしてんの?」 「アホ。返す前にちゃんと確認せえ」 功刀はジャージの上着のポケットから何かを取り出すと、 それをの手のひらにそれを置いてさっさと立ち去ってしまった。 の手のひらには銀色に光るコインが2枚乗っている。 「そうだ、昨日の…」 「200円? あいつに貸したの?」 「ちがうよ結人。昨日、一馬が奢ってくれたから使わなかったジュース代」 「一馬がジュースを奢った? っていうことは俺達に内緒で2人で会ってたってこと?」 「べ、別に内緒にしてたつもりねえよ…!」 「それより何でそのお金をあいつが持ってたのか、っていうのが大事でしょ」 「あぁ、一緒に昭栄探しに外に出た時に、外が寒かったから借りたの」 3人が「へぇ」「ふーん」「…」と三者三様の反応をしているとの後ろに西園寺監督が現れて、 手伝って欲しいことがあるからと、は食べていた朝食を片付けて監督と食堂を出た。 忙しい手伝いも今日で終わりなんだと考えれば苦にならなかった。 「なぁ、藤村。朝っぱらから気持ち悪いんにゃけど」 「何がや」 「顔がにやけ過ぎやねん。朝からゴキゲンなんておかしいで」 「いやー、普段の行いがええ奴にはええ事が起こんねやなあって思うて」 「ええ事って何やねん」 「それは秘密や」 昨日まで眠い目をこすりながら歩いていたシゲが朝から機嫌が良いことに、 チームメイトのノリックは不思議でしかたがない。 準決勝・決勝とある今日の試合に悪い影響が無ければ良いと心配するノリックに対して シゲは鼻歌を歌いながら朝食を取りに食堂へと歩いていた。 そこへ食堂から出てきた西園寺監督とが通りかかる。 立ち止まることなくノリックは2人に挨拶をすると、2人も立ち止まることなく挨拶を返した。 2人が通り過ぎた後、ノリックは黙ってるシゲをまた不思議そうな顔で見る。 「今日の試合、大丈夫やろか…」 |
2004.05.15 / Top | 15:Semi-Finals → |