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「何処に居るんだよ…」
は未だに西園寺監督を見つけることができないでいる。 すると突然、背後から自分を呼び止める声がした。 振り返るとそこには見た事のないジャージの人物が居た。 「誰か探してるの?」 「都選抜の監督」 「向こうで他の監督達と喋ってるけど」 指差す方向を見ると確かに他の監督達に混じって喋っている西園寺監督が居た。 「あんな所に居たんだ…ありがとね」 が西園寺監督の方に向かおうとした時、「ちょっと待って」とまた呼び止められた。 「何?」 「日生光宏。覚えておいてね」 日生はそう言ってにっこり微笑んだ。 けれどは頭にハテナを浮かべ何も答えず西園寺監督のほうへ駆けていった。 「やっぱり可愛い」 「光っくん何してるだ?」 「雄大は俺の邪魔しないでね」 「ん?」 「西園寺監督!」 「あら、どうしたの?」 「私何して良いか聞くの忘れてたんですけど」 「そうね、何してもらおうかしら?とりあえずお手伝いしてくれると助かるわ」 「手伝い…?雑用ですか?」 「雑用なんかじゃないわよ。まぁそんな大変な事はさせないから安心してね!」 「は…はい」 の顔は多少引きつっている。 そんな中選抜メンバーの集まっているほうで笛の音が聞こえた。どうやら基礎練習が始まったようだ。 「丁度良かったわ。ちゃんも準備運動代わりに一緒に基礎練習参加ね!」 「手伝いに準備運動関係無いと思うんですけど」 「良いからやるの。怪我でもしたら大変だわ!」 西園寺監督の言ったことは答えになっていなかったがあえて突っ込まなかった。 そして仕方なく基礎練習をする破目になった。 「各自リフティング100回!」 笛を吹く音と共に全員がリフティングを始める。 「何で私がこんなこと…」 は渋々と皆の集まっている場所へと向かう。 流石に皆選抜に選ばれるだけあって軽々とリフティングをしていた。 とりあえずは目立たない端の方で練習をすることにした。 しかし肝心なボールが無いことに気付く。 周りはまだリフティングをしている。借りる訳にもいかない。 ボールを捜して、辺りを見回すとボールの入ったカゴを見つけた。 横にはマルコが立っている。 ここへ来た日にはマルコを西園寺監督から紹介されていた。 だからお互い名前も知っている。 ボールを貰うためにマルコに向かって手を振りながら叫んだ。 「Marco! Pass a ball to me.」 の英語の発音はマルコにちゃんと通じる程良かった。 するとマルコはに気付きにっこり笑った。 「Okay!」 そう言ってにボールを軽く蹴ってパスをする。 はそのボールを足の甲で受け取った。 「Thanks.」 「You're welcome.」 はそのままボールを足の色々な場所でリフティングをする。 ボールを1度を落とすことなく軽々と続けていた。 すると周りの集中している雰囲気をぶち壊す人物が現れる。 「カズさん、あの子凄いですたい! 英語ペラペラやしボール1度も落としとらん! 俺あんなに続けられん!」 ゴーグルをした背の高い男がを見て言った。 横に居た帽子を被った”カズさん”と呼ばれる人物が背の高い男を殴る。 「初心者のお前とは違うとや! アホ!」 「何も殴らんでも良か…!」 「気が散るんだけど」 はリフティングしていたボールをそのまま蹴り上げ声のする方に向かって蹴った。 しかしそのボールは帽子を被った人物ががっちり受け止めた。 「ハンド」 「GKが手使うて何が悪いとや 」 「GKなの? この身長で?」 のその一言でどこからか「プツン」という音が聞こえたのは気のせいだろうか。 背の高い男は冷汗を流しながら固まっていた。 「身長なんて関係ないんじゃボケ! No,1 GKは渋沢やのうて俺や!」 「渋沢さんってGKなの?」 「お前、東京選抜のジャージ着ててそぎゃん事も知らんかったとや?」 「だってコレ借り物だし。でも渋沢さんの方が凄そうだよね。背高いし」 「だけん身長は関係無かって言うとるやろ!」 「カズさん落ち着いて下さい!」 「昭栄には関係無か!」 「ところで誰なの? 君達は」 が尋ねると帽子を被った人物が背の高い男を振り払って答えた。 「九州選抜GK功刀一や! さっきも言うたとおりNo,1 GKたい。よう覚えておけ!」 「九州選抜DF高山昭栄ですたい!」 功刀は偉そうに言うのとは逆に高山はビシっと一礼した。 それを見た功刀は「何でお前は礼なんかしとっとや!」とつっこむ。 は2人の行動を見て思わず吹き出してしまった。 突然の事に功刀と高山は目を見開いて驚いた。 「サッカーより漫才の方が向いてるんじゃないの?」 は笑っている。功刀達はの行動にただ呆然としていた。 深呼吸して呼吸を落ち着かせたは二人の方を見る。 「私は。で良いよ。よろしく」 まだ先ほどの笑いが取れないのか笑って挨拶する。 ここへ来てが笑ったのは今が初めてだった。 すると2人は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。 「俺はそぎゃんに笑われる事しとらん!」 「バリ可愛かー…」 功刀はそう怒鳴るが顔が赤い為説得力は全く無い。 高山も顔を赤くしぼーっと遠い世界へといっていた。 すると今度は藤代がボールを持ってのところへ走ってやってきた。 「さん、一緒に練習しよ!」 「私まだリフティング終わってないんだけど」 「藤代、勝手に移動するなって言っただろ」 追いかけてきた椎名が後ろから藤代の首を締め付ける。椎名はいつに無く不機嫌だった。 「ぐ、ぐるじい…ギブ!」 そして藤代が本気で苦しがってる様なので、椎名が仕方なく手を放す。 「チームメイトなんだから仲良くしなよ」 は飽きれてそう言った。 そして功刀が持っているボールを「返して」と言ってパスしてもらう。 「って何で九州の奴等と喋ってんだよ」 功刀達の存在に今更気付いた椎名はまたも不機嫌そうな顔をして言う。 その椎名を見て功刀も目付きを悪くして椎名を見た。 「俺が誰と喋ろうがお前等には関係ないやろ」 「は都選抜の人間なんだぜ」 「椎名、私はコレを今日1日限りの借り物だって言ったはずだけど」 「そのジャージを着ている限りうちのメンバーなんだよ」 「何でそうなるのよ」 「”東京”って書いてあるだろ。そんな事もわかんないの?」 「わかりません」 「とにかく! ちゃんは俺たち東京選抜のメンバーなの!」 「誰がそぎゃん事決めたとや!は違うって言うとるやろ!」 「九州の奴等には関係ないだろ! 何でそこまで言われなきゃなんないわけ?」 「それはこっちのセリフたい!」 「あーもう、うるさい! 練習の邪魔だからどっか行け!」 東京選抜VS九州選抜VSと言ったところだろうか。 藤代・椎名が功刀・高山に文句を言いそれにがキレている。 それを必死で止める両選抜のキャプテンの姿もある。 すっかり練習の事など忘れ、言い合いになってしまった。 するとそこに騒ぎを聞いた西園寺監督がやってきた。 「あなた達何してるの。練習の真っ最中よ?」 「玲! は俺達のマネージャーだろ?」 「あら、そういう事になったの?」 「違います」 「九州のマネージャーたい!」 「それも違う」 「関西選抜や!」 「全部拒否」 どさくさにまぎれて関西選抜も口を挟んでいたが、は全て拒否をしていた。 それに対し投げかけたメンバーは落ち込んでいたが、見ていた西園寺監督はクスクスと笑っている。 「何が可笑しいんだよ、玲」 「実はね、ちゃんには全体のマネージャーをやってもらうことになってるのよ」 西園寺監督の言葉に一時その場は静まり返った。 そしてそれを聞いて1番驚いたであろう本人が口を開いた。 「はあ? なんで!」 「せっかく来たのに見学だけじゃ退屈でしょう」 「全然そんなことないんですけど…」 マネージャーなんてものを絶対やりたくないと思っていただけあって、 そのショックは計り知れないものである。 しかし落ち込むとは逆に周りのメンバー達はかなり嬉しそうだった。 「よろしく頼むわね、ちゃん」 「やだ!」 |
2003.03.08 / Top | 04:Manager → |